市区町村からの色々な質問が出ていますので問答集を作りました。
業務の参考にしてください。
Q:01 買戻特約の期間満了による抹消登記の原因日付はいつか?
買戻特約の期間満了の原因日付は期間満了日の翌日です。
(書式精義上1885頁注3)
(昭和63年8月30日決議、昭和63年11月16日東京法務局長承認・東京登記実務協議会決議事項第2問)
そこで、何年間という定め方であればそれでいいが、何月何日から何年間と記載した場合に初日を算入するかについて一見説が分かれている。(横浜算入、先例解説不算入)
しかし、精査してみると初日算入について初日を零時からの契約とみているか、日の途中とみているかの違いであり、零時とみれば初日は算入し、途中とみれば初日は算入しないだけであり、結論としては期間満了の翌日である点は同一である。
<参考>
- 不動産登記書式精義上1885頁注3
- 昭和63年8月30日決議、昭和63年11月16日東京法務局長承認・東京登記実務協議会決議事項第2問
- 登記先例解説集18・2・152
- 横浜地方法務局管内登記事務連絡会における回答について(依命通知)司第2-1号(平成2年12月3日開催協議会回答
-
昭和63年8月30日決議、昭和63年11月16日東京法務局長承認・東京登記実務協議会決議事項第2問から
- 第2問
- 買い戻し特約の登記抹消の際の「買い戻し期間満了の日付」は、応答日か、その翌日のどちらでしょうか
- 決議
- 買い戻し期間満了による買い戻し権抹消の原因日付は、期間の終期を確定日をもって定めたものであるときは、その翌日、年をもって期間を定めたときは、期間の計算に初日を算入しないので、起算日の応答日の前日をもって期間が満了するから、期間計算の起算日の応答日となる。
-
登記先例解説集18・2・152から
期間徒過による買戻特約の抹消登記の原因日付
- 質問
- 期間徒過による買戻特約の抹消登記の原因日付は、次のいずれによるべきでしょうか。
- 1.買戻期間の最終日を記載すべきである。
2.買戻期間最終日の翌日を記載すべきである。 - (姫路市 E・S)
- 結論
- 買戻期間最終日の翌日を記載すべきです。
- 解説
- 民法579条は、「不動産の売主は売買契約と同時に為したる買戻の特約により買主が払いたる代金及び契約の費用を返還してその解除を為すことを得」とし、さらに581条で「売買契約と同時に買戻の特約を登記したるときは買戻は第三者に対してもその効力を生ず(現代仮名に変換)」と規定しています。右の(本文は横書きです)買戻の特約については、不動産の帰属を長い間不安定な状態に置くことを避ける趣旨で、買戻期間について「10年を越えることを得ず」(同580条1項)と制約するとともに、期間の定めがある場合にはその伸長を不可とし(同条3項)、期間の定めがないときは5年内に買い戻すことを要す(同条3項)と制限しています。
- ところで、ご質問の買戻期間の徒過による買戻権抹消登記の原因日付の点ですが、例えば、「何年何月何日から何年間」とした場合には起算日(初日は算入しない)に応答する日の前日をもって満了することになり、登記原因たる「買戻期間満了」の日付は、その期間の最終日の翌日(正確には翌日の午前0時)ということになり、また、買戻期間を「何年何月何日まで」とした場合も当該最終日の翌日を記載すべきでしょう。
- 尚、期間の徒過によって買戻権が消滅する場合は、登記簿上買戻権の消滅したことが明らかであることから、抹消の登記をしなくても第三者に対抗できることはもちろんです。
-
横浜地方法務局管内登記事務連絡会における回答について(依命通知)
司第2-1号(平成2年12月3日開催協議会回答から)支局長殿
出張所長殿横浜地方法務局首席登記官
不動産登記担当
法人登記担当横浜地方法務局管内登記事務連絡会における回答について(依命通知)
平成2年12月3日開催の標記協議会において別紙の通り回答したので通知する。
提案年月日 平成2年12月3日
番 号 司 第2-1号
件 名 下記事項のとおり提案事項
1.買戻特約の抹消における登記原因日付の記載について(照会)
買戻期間を昭和45年10月1日から10年間と定めている買戻特約の登記に関し、買戻期間満了を登記原因として抹消する際の原因日付につき、現在下記両説による取扱いがなされているやに聞き及んでおります。
(イ) 昭和55年10月1日(期間満了日) 参考 民140、141
(ロ) 昭和55年10月2日(期間満了日の翌日) 参考 書式精義(上 P865)当職としては(イ)説が相当(但し登記申請可能日は翌日)と思料するも、住宅・都市整備公団等は予てより(ロ)を採用しているため、実務面において若干の混乱があるやに見うけられます。よって御庁のご意見を賜り度く照会します。
2-1
昭和55年10月1日を登記原因の日付とする。
期間の定め方を「10月1日から10年間」とした場合には、初日は算入する(「・・・・をした時から10年間」とした場合には、初日は算入しない。)。
また、期間の計算は、民法の一般原則により、起算日に応答する日の前日(本問では、昭和55年9月30日)をもって満了することになる、つまり、その期間の最終日の翌日(本問では、昭和55年10月1日。正確にはその日の午前零時)となる。
尚、(ロ)で引用する文献による考え方によっても同様の結論となる。
Q:02 区が不動産を買収する場合に所有者が死亡していて、その相続人中行方不明者がいる場合、どうするのですか?
死者名義不動産という場合には二つの場合が考えられます。
① 一つは生前被相続人が売却し、その後登記名義人が死亡した場合(生前売買)
② 登記名義人が死亡した後、市や区が買収する場合(相続人売買)
登記手続き的には①の場合には現在の登記名義人から直接移転登記を受け、②の場合には相続登記を経た上で移転登記をします。
尚、②の相続人売買の場合は②-①遺産分割協議が整っている場合と②-②整っていない場合に細分化されますが、上記の場合を分けて説明します。
①の場合は相続人全員が登記義務者として登記の承諾書を添付しなければなりません。そして、相続人中、行方不明者がいる場合には、不在者の財産管理人を家庭裁判所に選任してもらい、当該財産管理人及び他の相続人全員の承諾書(印鑑証明書添付要)を添付することになります。
②-① 遺産分割の結果、行方不明者が相続人でなければ、相続登記後に現実の所有者からの承諾書を添付すれば足りますが、行方不明者が相続人である場合には、不在者の財産管理人を家庭裁判所に選任してもらい、選任された財産管理人は更に家庭裁判所から権限外行為の許可を得た後、他の相続人とともに承諾書を添付することになります。
②-② 不在者の財産管理人を家庭裁判所に選任してもらい、選任された財産管理人は更に家庭裁判所から権限外行為の許可を得た後、他の相続人と遺産分割協議の上相続登記をしてもらいます。その後の手続きは②-①と同様になりますが、もし遺産分割の結果不在者が相続人となる協議であれば再度、家庭裁判所から権限外行為の許可を得なければならなくなりますので、出来れば分割協議では不在者以外の者が相続人となっていただいた方がベターといえるでしょう。
<問題の所在>
被相続人が生前、市や区に不動産を売却もしくは寄付した場合、当該不動産は相続財産ではありませんが、相続人は全員登記義務を承継しており、登記にも全員が関与する必要がある為、相続人中に行方不明者が存在する場合、このままでは移転登記が行えません。そこで問題となるのが相続財産管理人か不在者の財産管理人かという問題ですが、相続財産管理人というのは相続人のあることが明らかでないときの相続財産法人の管理人ことであり、今回は他に相続人がいますので相続財産管理人ではなく行方不明者の財産管理人だと言うことです。そして、当該財産管理人の権限は保存、利用、改良行為は出来ますが、財産の処分は勝手に出来ませんので家庭裁判所から権限外行為の許可を受けなければならないと言うことです。権限外行為の許可は遺産分割協議をするときにも必要ですし、協議の結果取得した財産を処分するときもともに必要になります。
<参考までに>
当該不動産の他に財産がある場合にはその財産を行方不明者の財産管理人に相続してもらう方が買収代金を支払う際にも代金の受領権限で相続人が争うこともないでしょうし、不在者の財産と言うことを気にすることもなくなりますのでベターといえます。
尚、承諾書には実印を押捺してもらい、印鑑証明書を添付しますがその印鑑証明書の有効期限はありません。選任審判書についても同様ですが、嘱託登記にせず共同申請をする場合は印鑑証明書も選任審判書(官公署発行の資格証明書となります)も三カ月以内のものを添付しなければなりませんのでご注意ください。
Q:03 マンション敷地の一部の寄付を受けるときは、どんな手続が必要なのですか?
マンション敷地については分離処分が出来ませんので(区分所有法第22条第1項)、一部の寄付を受けるときには分筆はもちろんのこと集会により分離処分可能規約を設定しなければなりません。(区分所有法第22条第1項、31条第1項)
また、分筆後の土地には分筆前の登記事項が転写されますので(不登法第93条の16第3項)(抵当権者等の消滅承諾により転写しないこともできます(不登法第93条の16第3項、第5項83条第3項。)分筆後の転写された担保権等を抹消した後所有権移転をしなければなりません。
登記面から見ますと
- 当該部分を分筆します。
- 次に分筆後の土地登記簿の敷地権たる旨の登記を抹消します。
- 登記官の職権により各建物の登記から分筆後の土地に登記事項が転写及び土地の登記用紙中転写すべき登記に遅れる登記があるときはその登記が移記されます。
- その後に担保権等の抹消をし、負担の無い状態にして、
- 所有権移転登記を行います。
* 抵当権者等の消滅承諾がある場合には上記③をせず(不登法第93条の16第3項、第5項83条第3項。)、専有部分の登記簿の抵当権に抵当権消滅の付記登記がされます。(不登法第93条の16第4項、第5項、83条第3項。)その場合には上記④の手続きは不要です。
<問題の所在>
上記手続きはかなり面倒な手続きと処理日数が必要となります。
まず、集会決議の得られること集会の決議は区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成が必要となりますの(区分所有法第31条第1項)でその要件を充足出来ることが前提となります。
次に、各区分所有者には多数の債権者がおり、それら利害関係者全員の承諾が得られるかどうかが問題となります。一人でも反対の債権者がいると抵当権等が付着したまま所有権移転をすることになり、売買契約条項の契約違反となるおそれがあります。
また、それら債権者は全員が無料で担保権の抹消に応じてくれるとは限りませんので抹消のための承諾料が全員同一条件になるとも限りませんし、債権者からすれば千載一遇のチャンスとして区分所有者が受領するであろう売買代金に差し押さえや質権設定をすることさえあり得ますので全債権者の抹消承諾の確認がとれるまでは契約を締結することさえ躊躇する場面もあると思います。
要は多くの時間と多数の利害関係人をいかに調整し、納得させられるかが今回のポイントといえます。
<参考までに>
敷地権の抹消登記を行いますと、その登記と同時に突然、数百名にも及ぶ共有者と担保権者等が出現し、この全員(相続人、海外居住者、不在者を含む)を相手に手続きを進めることになるので膨大な手間と日数及び区分建物登記に関する専門知識が必要となります。
まず、区分所有者の議決権ですが出席できない区分所有者もいると思いますので、その方たちから議決権行使の委任状を取り付けて決議するという方法(区分所有法第39条第2項)であれば比較的スムーズに集会の決議は得られると思います。
次に債権者等の利害関係人の承諾ですが、土地を買収してもその土地は道路となるので担保評価には影響が無い旨及び多数の債権者が足並みをそろえなければ今回の契約自体が出来ない事を説明し、それでも解決が出来ない場合は最終的には土地収用という手段も検討を要します。
Q:04 6人の共有地(私道)を区に寄付を受けたいと思いますがそのうちの一人が行方不明である。嘱託登記の添付書類である承諾書に行方不明者の印鑑をもらわずに移転登記ができる方法があるか?できないのであれば、どのようなことをしなければならないのか?
前段については不在者本人が承諾をしなければなりませんので他の共有者が代わりに承諾をするということはできません。(但し、不在者が未成年者で親権者がいる場合は親権者が法定代理人として承諾することは可能です)
後段については不在者が財産の管理人をおいていない場合については利害関係人は不在者の財産管理人の選任申立をし(民法25条)、その後権限外許可を得て(民法28条)財産管理人の承諾書(不動産登記法31条1項)を添付することになります。その際には選任審判書、権限外許可書、印鑑証明書を添付しなければなりません。
もし、不在者の生死が7年間明らかでないときは家庭裁判所は利害関係人の請求で失踪宣告をするということになっております。(民法30条1項)ので行方不明になったのが7年以上前で、なおかつ生死不明の状態であれば失踪宣告の申立も検討しなければなりません。しかし、失踪宣告があると7年の期間満了の時点に置いて死亡したものとみなされてしまいますので(民法31条)相続が発生し、相続人を相手として承諾書の徴求をしなければなりませんし、今般の寄付による所有権移転の前提として、相続による所有権移転登記をしなければなりませんので費用と時間が多分に浪費してしまうことになりますので生死不明者の推定相続人が他の財産も含めて整理をしたいと希望するのでなければ前述の不在者の財産として対処した方がよいと思います。
Q:05 抵当権を抹消したいが抵当権者が行方不明の場合どの様に抹消したらよいのでしょうか?
抵当権者が行方不明の場合には不動産登記法142条に規定があり、除権判決による単独抹消を原則としていますが、担保権の抹消については特別に債権証書及び債権並びに最後の2年分の定期金の受領証書を添付すれば単独で抹消することができます(同条3項前段)。更に債権の弁済期より20年が経過しているときにはその期間の経過後に債権、利息及び損害金の全額に相当する金銭を供託したときにも担保権の登記権利者による単独抹消をすることが認められています(同条3項後段、所謂休眠担保権の抹消)。
上記3つの場合を分類すると次の通りです。
- 除権判決による場合
既に抵当権が消滅しており、登記義務者が行方不明という場合。 - 受取証書による場合
弁済が完了し、債権証書も受取証書もあるが登記義務者が行方不明の場合で、弁済額は元本及び最後の2年分の定期金。 - 休眠担保権の場合
抵当権者が行方不明の場合で、債権の弁済期より20年を経過しており、尚かつ債権額、利息、損害金の全額を供託しなけlばならない。
行方不明の前に債務の弁済があったなどの抗弁は認められず、二重払いの可能性も否定できないが簡便な方法である。
更に別な角度から見ると1の場合は所有権以外の権利全てに適用でき、2及び3は先取特権、質権又は抵当権を対象としており、又1及び2については抵当権は債務を弁済しており、3の場合は供託により弁済の効果を発生させるものといえる。
Q:06 休眠担保権の抹消について説明してください。
休眠担保権の抹消手続きは、債権の弁済期から20年以上を経過した担保権の登記に限り、弁済供託による担保権の消滅を擬制して、登記権利者が単独で登記の抹消を申請することが出来る制度です。
1.適用要件
- 先取特権、質権又は抵当権に関する登記の抹消を申請する場合であること(根抵当権についても適用がある)
- 登記義務者の行方が知れないため共同申請によることができないこと
- 債権の弁済期から20年を経過したこと
- 申請書に債権の弁済期から20年を経過した後に債権、利息及び債務の不履行によって生じた損害の全額(現存額ではなく最高額の意味)に相当する金銭を供託したことを証する書面を添付すること
2.申請手続
- 申請当事者
申請当事者は登記権利者及び登記義務者であるが、申請行為者は登記権利者の単独申請による。 - 申請書の記載
申請書に記載すべき「登記原因」(法第三六条第一項第四号)は、「弁済」であり、「其日附」(同号)は、供託の効力が生じた日(供託金が払込まれた日)である(通達第3の6)。 -
申請書の添付書面
- 登記義務者の行方を証する書面
- 債権の弁済期を証する書面
- 債権の弁済期から20年を経過した後に債権、利息及び債務の不履行によって生じた損害金の全額に相当する金銭の供託をしたことを証する書面
Q:07 買戻特約の登記を抹消する場合には登記名義人の表示が変更変更していた場合には抹消登記の前提として登記名義人表示変更登記をする必要はありますか?
変更証明書を添付すれば不要です。
<参考>
買い戻し特約の登記の抹消登記を申請する場合に、申請書記載の登記義務者(買い戻し権者)の表示が登記簿と符合しない場合でも、前提として表示変更(更正)の登記を申請することなしに変更(更正)を証する書面を添付して申請できる。【登記研究460・105】